間宮のコラム まみこら vol.18
“問い”のチカラ(1)

間宮 洋介

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“問い”プードル

会社名は”Question”から

 

以前のコラムでも書かせていただきましたが、株式会社Queの社名の由来は”Question”から来ています。簡単にそれらしい“答え”が溢れる世の中で、“問い”こそが、世界を正しく前に進める、と思ってつけた社名ですが、偶然にも、今年視察したSXSW(サウスバイサウスウエスト)は、いわば“問い”の祭典でした。最新の技術を見に行く場所ではなく、「どうすればbetter futureを迎えられるか」の「問い」を議論する場所。参加したセッションの中でも「問い」の重要性を論じるものも多くありました。また、偶然にもオースティンから帰ってきた日のNews Picksで、電通時代の同期、山口周氏が「“問い”を立てられる人材こそ、イノベーションが起こせる」という記事をポストしていました。そんなこともあり、改めて、数回に渡り、SXSWのレビューもまじえて、「問い」が持つ力について書いていきたいと思います。「問い」は、戦略を立てる上にとって、出発地点になる非常に大切な概念だからです。

 

 

 

モテる男は“問い返す”

 

SXSWの話をする前に、ちょっとどうでもいい話から“問い”のチカラについて語っていきたいと思います。これ、非常にくだらないし個人的感覚なので、どうしても時間余っちゃってしょうがないなー、という方だけ読んでいただければ幸いです。        って、これだけ前置きしたらいいですかね、すみません。昔、仲が良かった友人がいたのですが(今も仲良いんですが)、そいつはめちゃめちゃモテるやつでした。彼のすごかったところは、異性(女性)からモテていたのはもちろん、同性(男性)からも幅広く好かれ、特定のグループだけではなく、いろいろなコミュニティから声がかかるような忙しい男だったことでした。いつも隣で見ていてそのモテっぷりに一抹の嫉妬を感じてしまう一方で、自分も彼のことはいいやつだと思っていました。あまりにも彼がモテるので、一時期自分は、なんで彼がそんなにモテるのか、そっと研究していたことがあります(やや悪趣味)。もちろんモテる要因として彼の容姿や金回りもありますが、彼の特徴的な“クセ”に気がつきました。ここら辺から超独断ドライブです。自分が気づいた彼のクセとは、人に質問された時、かなりの割合で「聞き返すこと」でした。例えば「○○って知ってる?どう思う?」と聞かれた時「ん?」と聞き返すことが多い。彼は決して頭の回転が悪いわけではない(むしろ他の人より頭良い)ので、単なる“クセ”なんだと思いますが。

 

 

 

適切な”問い返し”がモテにつながるわけ

 

一般的には「質問を質問で返す」ことはマナー上失礼だと言われます。自分も例えば人に「どちら出身ですか?」と聞いた時に「どこだと思います?」とか聞き返されるのは正直イラっとします。でもなぜ彼が「問い返す」のがモテる秘訣だと思ったかというと、人は、「そのとき目の前に人がいると、その人の“理解”と“同意”が欲しくなる」という習性を持っていると思うからです。例えば、あなたが、先ほどのように、目の前にいる(もちろんLINEでもいいんですが)誰かに「○○って知ってる?どう思う?」と聞いて、相手から「ん?」と聞き返された時、きっとあなたは「自分の質問の意味が、相手に伝わらなかったんだ」と思うと思います。とするときっと次にあなたは「この人に自分の質問の意味をわかってもらうためにはどう言えばいいんだろう」と考えることになります。それは、実は知らず知らずの間に「相手に自分を理解してもらうために脳を動かしている」という状態になります。「相手に、自分のことをわかってもらいたい」と思うこと、それはある意味「恋」の始まりです。たとえ最初はそれほど意識していなかった人でも、「ん?」と聞き返されることで、その人は相手に対して「強制的に考えてしまう=相手のために時間を使ってしまう」ことになるのです。強引ですが。

 

 

 

恋愛の大家のおはなし

 

実は、ある女性アーティストも似たようなことを言っていました。あ。「恋愛のおおや」じゃなく「たいか」です念のため。そのかたは同性から「恋愛のカリスマ」と言われるような方で、女子に響くヒット曲を連発している方でした。きっと数々の恋愛のストーリーを持つ、「恋愛の勝ち組」なのだと思います。その方が言うには「男性が必ず落ちる方法がある」とのこと。なんだろうと思って聞いていると、こんなことを言っていました。「気に入った男性がいると、私は、その日、その人と別れるときに『私、あなたのことが好きになってしまったみたいです』とだけ言って、さっさと立ち去るんです。もちろんある意味本気の告白なのですが、決してすぐには返事をもらいません。そしてもちろん『いついつまでに返事が欲しいです』とも言わないんです」「そうするとその男性は『あの子に好きです、と言われたな』『今度あったと時になんて言えばいいんだろう』と考えるようになっちゃうんです。好きとか嫌いとか、受ける、断る、の前に、その人の中で私のことを考える『時間』を、強引にでも増やすことが大事なんです。」、、、なるほど、と、モテる友人の研究をしていた自分はそう思いました。告白して、すぐに返事をさせてしまったら、もうそれで終了する。彼はそれ以上彼女のことを考えなくなります。何故ならもう「答え」を出してしまっているから。彼女の「問い」を預かっている状態は、「相手のことを(強制的に)考えさせる時間を持たせてしまう」という意味で、先ほどの友人の「聞き返し」を食らっている状態と同じなのです。広告用語でいうと、「マインドシェア(頭の中でそのブランドを思い浮かべる「シェア」)を強制的に確保させちゃう」ということです。平時の吊り橋効果、ですかね。

 

 

 

以上、史上最強引ですが

 

そんなわけで(本当にそんなわけなのかはやや疑問ですが)、結構強引ですが、「問い」の持つチカラについて、突拍子もない方面から論じさせていただきました。明日からもっと真面目に書きます(多分)。ちなみに、考えてみると、自分は人に何か聞かれても、ほとんど「問い返す」ことをしないなあ、、、と。なるほど、、、確かにモテないわ、自分。あ、ちなみに、ここに書いたことは、友人にしても、女性アーティストにしても、十分に人間的な魅力を持つ人だから成立するのかもしれず、誰にでも当てはまるわけではないかもしれないことを断っておきますね。使用する際は、自己責任でお願いします。

YOSUKE MAMIYA
1994年電通入社。2年間のマーケティング局、16年間の営業局勤務を経て、2012年よりCDC。 「戦略とは、課題の言語化である」を戦略立案の芯に据え、戦略から表現まで統合し、あらゆる課題解決業務に従事。関わる領域は、広告コミュニケーションにとどまらず、事業系ソリューション、中長期経営計画立案、インナーのモチベーション・デザインなど多岐にわたる。 2017年に電通より独立。2018年 株式会社 Que 代表取締役CEOに就任。 主な仕事として、キリンビール「一番搾り」「氷結」キリンビバレッジ「午後の紅茶」「FIRE」におけるコミュニケーション・デザイン。 トヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」「PRIUS PHV」「C-HR」のコミュニケーション戦略、 NTT ドコモ「2020 東京オリンピック協賛プロジェクト 」、プレナス「ほっともっと」ブランディング・ディレクション、日清食品「カップヌードル」 「UFO 」におけるキャンペーン・プランニングおよび、フロンテッジにおける事業コンサルテーションなど。