間宮のコラム まみこら vol.36
大麻解禁論について

間宮 洋介

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メイ(5月)が終わりますね

 

“リーガル・ハイ”好きだったのになー

 

デジタルチャイナ、行ってきました。帰ってきました。FBにも書いたのですが往復ビンタ50発食らったような感じでしばし呆然としてしまいました。いや、率直言ってオースティン以上の衝撃。一方、あっちに行っている間、VPNにつなげるたびに繰り返し飛び込んできたニュースが、元KAT-TUNの元メンバー、田口淳之介氏が大麻取締法違反で逮捕されたニュースでした。KAT-TUNといえば、空中分解した時もあちゃーと思ったものですが、本当に現メンバーは災難続きで大変ですね。ご愁傷さまなことだと思います。本当に。一方で、自分も“リーガル・ハイ”がめちゃめちゃ好きだったのでそれがもしかしたら再放送とかなくなってしまうのはちょっと困ります。あのドラマでの彼の飄々とした役柄も好きだったので。というのは置いておいて、この事件に端を発して、ネットの一部で「いっそ大麻解禁しちゃえ」というウエーイ的議論が巻き起こっていることはちょっと気になっています。SXSWで大麻(ビジネス)についてちょっと関心が出てきて少し学んだ身として、日本での大麻解禁について考えを述べてみたいと思います。まあ、きっとネットで解禁論を唱えている人もある意味、カウンター(反証的立場)から議論の種を提供しようとしているだけだとは思っているのですが。

 

 

 

日本でも大麻を解禁すべきか

 

個人的にいうと、自分は、今の段階で日本はすぐに大麻を解禁すべきではない、と考えています。これは医療用大麻に関しても、です(今、もうすでにグレーゾーンとしてオイルとかでは買えたりするのですが)。SXSWに関するコラムの中で、大麻について色々書きました。医療用大麻は全米でも33の州で認可されていること、そして嗜好用大麻についても、カリフォルニアで解禁になったことで一気にビジネスが広がったこと、それが州政府の財源に好影響を与えているという話も書きました。一方でニューヨーク州において4月に医療用大麻を含んだ食品の販売停止命令が出た、という話も書きました。このことは、医療用大麻だけではなく、嗜好用大麻が解禁される国や州が増えたことで、一気にグローバルスタンダードが変わったわけではないことを証明しています。日本における大麻解禁論者が「世界はもうみんな大麻解禁しているのだから、日本もすべき。グローバルスタンダードに合わせるべき」と言うのはここに大きな認識の間違いがあります。例えば、国全体で嗜好用大麻を認可するカナダにおいても、大麻販売時には、タバコ並みの警告表示が義務付けられています。確かに大麻を合法化する国や地域は近年増えましたが、それでも各国の政府や地方政府も、未成年への影響、社会的・文化的影響など、ポジティブな面でもネガティブな面でも、どのくらいのインパクトがあるのかを見守りつつ政策を実行している状況なのではないかと思っています。

 

 

 

踏むべき段階をすっ飛ばしてはいけない

 

もちろん、だからと言って日本は今のままずっと大麻を禁止し続けるべきか、と言うとそうではないと思っています。医療用大麻には「薬」としての効果が期待されています。大きくは炎症を抑える、ということでガンにも効果を発揮するのではないかと。それが本当なら、明らかに課題解決の手段となり得ると思います。ただし、これも以前に書いたのですが、一方で、現段階ではその「研究結果」が十分に得られていない、という問題があります。なぜなら日本では研究用でも大麻の所持は禁止されており、研究者が薬効の研究をしようにも、大麻を手に入れることが不可能だからです。日本における新薬の認可が厳しいことはよく知られていますが、これは日本の治験が要求するレベルが高いことが影響しています。個人的に、例えば外国で認可された新薬が日本でも認可されるようになるまであまりにも時間がかかりすぎだろ、とは思うのですが、これは、決して薬害事故を起こすまいという信念に基づいた現状の日本のルールであり、そこの方針が変わらない限りはそこに文句を言っても仕方ないと思っています。そんな中で、国内の研究家が「研究すらできない」状態の大麻をいますぐ解禁し、合法化しろ、というのはあまりに乱暴な話のような気がします。それでも大麻解禁論者は「いや、海外で十分に研究されているから、いいじゃないか」ともいうのですが、実は海外でも大麻の薬効や副作用(依存性など)について、学会で認められ、コンセンサスが得られた研究結果はそれほどありません。そもそもそれ以上に、海外で研究され、認可されている薬だったら日本でもOK、ということなら、他の薬でも同じであるべきで、大麻だけが例外というのはおかしな話だと思います。合法化の議論はそもそも「大麻は薬である」ということから端を発しているわけなので。そういう意味で言うと、医療用大麻が合法化されないのに、嗜好用大麻が合法化されるなんていう状況は、間違ってもあってはならないと思います。

 

 

 

この先議論すべきこと

 

日本の大麻に対する規制に関してよく言われているのは、GHQの戦後教育の一環で大麻に関してすべて禁じた、つまり「ないもの」にした、というのが正しいようです。その頃はアメリカでも大麻が合法化されるなんて動きはありませんでした。確かに時代は動き、大麻によるなんらかの課題解決が行われる可能性について、明るい期待が持たれるようになってきたのも事実だと思います。だからこそアメリカをはじめ世界の各国で大麻が解禁されるという動きが出てきているのだと思います。そしてこれだけ世界がネットワークで繋がり、海外の情報にアクセスできる今、引き続き大麻を「ないもの」として扱い、見ざる聞かざるという態度を貫くのは完全に逆効果だと思います。実際に世界では、大麻は酒やタバコよりも依存性が少ない、と信じる人たちも増えてきています(根拠が本当にあるのかはちょっと疑問ですが)。自分も以前のコラムで書いたように、例えば日本の場合、超高齢化社会や医療費爆発問題に対してなんらかのソリューションになるかもしれないとは思っています。ただしそのためにまず必要なのは、「大麻なんてない=見て見ぬ振り」をやめ、「薬としての大麻」についての研究をどのように進めていくのかの議論だと思います。大麻解禁論者が言うように急ぐべきなのであれば、まずその議論を急ぎ、その法制化を急ぐべきで、芸能人が捕まったから「大麻なんて解禁すればいいじゃん」「それが世界の常識だ」と騒ぎ出すのはおかしい、と思うのです。何度も言うように、大麻が解禁され、合法化される出発点になる考え方はあくまでも「大麻は薬なのである」なのですから。というのが個人的に言語化した日本における自分の大麻合法化への考えです。来月はもう少しペースを上げて、デジタルチャイナに食らった50発往復ビンタについて書いていこうと思います。

YOSUKE MAMIYA
1994年電通入社。2年間のマーケティング局、16年間の営業局勤務を経て、2012年よりCDC。 「戦略とは、課題の言語化である」を戦略立案の芯に据え、戦略から表現まで統合し、あらゆる課題解決業務に従事。関わる領域は、広告コミュニケーションにとどまらず、事業系ソリューション、中長期経営計画立案、インナーのモチベーション・デザインなど多岐にわたる。 2017年に電通より独立。2018年 株式会社 Que 代表取締役CEOに就任。 主な仕事として、キリンビール「一番搾り」「氷結」キリンビバレッジ「午後の紅茶」「FIRE」におけるコミュニケーション・デザイン。 トヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」「PRIUS PHV」「C-HR」のコミュニケーション戦略、 NTT ドコモ「2020 東京オリンピック協賛プロジェクト 」、プレナス「ほっともっと」ブランディング・ディレクション、日清食品「カップヌードル」 「UFO 」におけるキャンペーン・プランニングおよび、フロンテッジにおける事業コンサルテーションなど。