正しさが一つなら、話し合えば決まる。正しさが複数あるとき、話し合いでは決まらない。
私たちのところに来る仕事は、たいてい関わる部署が多い。国内のマーケティング、海外のマーケティング、広報、事業部、経営企画。いくつも並ぶことがあります。
そして、それぞれのビジネスゴールが違う。
ここが厄介なところで、誰も間違っていないのです。海外を見ている人は海外の事情から正しいことを言っている。広報は広報の責任から正しいことを言っている。全員が、それぞれの持ち場で正しい。だから、議論をすればするほど、結論が遠のく。コンセプトが決まるまでに半年かかることもあります。
正しさが一つなら、話し合えば決まります。正しさが複数あるとき、話し合いでは決まりません。
では、どうするか。私たちは、つくって見せます。
言葉の状態で「AとBのどちらがいいか」を議論しても、各自が自分の持ち場から評価するので、平行線になる。ところが、映像でも、ポスターでも、一枚の企画書でも、形にして目の前に置くと、話が変わります。「こっちのほうがいいですね」と、理由より先に反応が出る。その反応は、部署の立場ではなく、その人が生活者としてどう感じたかに近い。だから揃うのです。
私たちがアウトプットをつくるのは、決めるためです。
これは、制作会社としての順序とは少し違います。ふつうは、決まったものをつくる。私たちは、決めるためにつくる。だから途中の段階でも見せるし、捨てる前提のものもつくります。完成度の高いものを一発で出すより、判断ができる状態のものを早く出すほうが、結果的に速い。
もちろん、最後は完成させます。その水準まで持っていく責任は当然あります。ただ、その手前に「決める」という工程があって、そこにもクリエイティブが要る、という話です。決まっていないものを、決まったことにする力。合意をつくる道具としてのアウトプット。
だから私たちの仕事は、途中がやたらと長い。そして、途中が面白い。
決まってしまえば、あとは早いのです。