間宮のコラム まみこら vol.24
SXSW2019(4)

間宮 洋介

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SXSW2019でも大きなテーマに

“グリーンラッシュ”

 

自分が今年のSXSW視察に行きたいと思った主な目的は、アメリカにおける”大麻ビジネスの勃興”について学ぶこと、でした。ご存知の方も多いと思いますが、今、アメリカでは(州によってですが)大麻が合法化される動きが顕著になりつつあり、それに伴って大麻に関わるビジネスと市場が急伸長しています。アメリカではかつての“ゴールドラッシュ(金ビジネス)”“シリコンラッシュ(ITビジネス)”に次ぐ新市場の創造の動きとして“グリーンラッシュ”とも言われています。大麻に関して規制緩和される兆しがない日本ではなかなか表立って話されたり議論されたりする機会が少ないのですが、SXSWを視察してみて、日本以外の国や地域では大麻ビジネスに対する関心が急速に高まっているのを感じました。実際に自分が参加した大麻ビジネスに関するセッションでも、世界中の人たちがパネリストに活発に質問していました。ただ、自分もあまりにも大麻に関して予備知識がなかったため、いきなりセッションを聞いていてもよくわからなかった部分もあったので、調べたことも含めてまず、大麻ビジネスを理解するために必要な基礎知識について整理したいと思います。

 

 

 

大麻の基礎知識

 

まず、超基礎的な話でいうと、大麻は「麻」から取れます。よく「葉っぱ」という言葉が使われるのですが、葉っぱには「成分」がほとんど含まれていないため、主に使われるのは「花」の部分と「茎」「樹脂」の部分です。そしてこの「使う場所」によって、大麻の「種類」が分かれます。この「種類」を知っておかないと、セッションで話し合われていることが全くわからなかったのでセッションを聞きながら高速で検索していました(先に知っておけよ、という話でもあるのですが)。大麻の「種類」は2種類で、主に「茎」や「樹脂」から採れるのが”CBD”、主に「花」から採れるのが”THC”というものです。成分はほとんど同じなのですが、すごくざっくりいうと、”CBD”は鎮静効果があり、中毒性が低く、いわゆる「医療用大麻」と言われ、対して”THC”はハイになる成分が含まれていて“CBD”と比較すると依存性も認められる、いわゆる「嗜好用大麻」と言われるものです。後者はいわゆる“マリファナ”ですね。なぜこの区分けが大切かというと、アメリカでは”CBD”は半数以上の州で合法なのに対して、”THC”を州法で合法化しているのはカリフォルニア、コロラドなど、10州以下です。そして今“大麻の合法化”として話題になっているのは“THC”の話がほとんどです。処方箋もいらず、しかも“ハイになる”効果もあるので、”CBD”と比較すると社会的なインパクトが大きいからだと思います。吸引機器で、タバコのように吸うのが”THC”の代表的な使い方です。煙モクモク。一方、”CBD”は鎮静効果が認められ、精神的にリラックスさせたり、体の炎症を鎮める効果があったり、ある研究ではガンの治療にも効果を発揮する、という結果が出たという話もありました。

 

 

 

CBDオイルは日本でも買える

 

自分も知らなかったのですが、実は、”CBD”の成分が入った「CBDオイル」というのは日本でも買えます。楽天で検索すると、アロマオイルのような小瓶に入ったオイルが出てきて、よく読むと、「気分をリラックスさせるサプリメント」的な謳い文句で「幼児からお年寄りまで」みたいなことが書かれています。個人的には「えっ?CBDといえど、大麻じゃん」と思っていたのですが、日本の大麻取締法は、依存性の観点から「葉」と「花」を禁止しているらしく、「茎」から採れるCBDは、正当な手続きを経て税関を通ればいちおう食用品として販売できるようです(ただ、そこらへん、明確にしていない業者が多いので、もしかしたら未だグレーゾーンなのかもしれません)。ここでは紹介しませんが、興味あったら検索してみてください。ようは、日本で禁止されているのはいわゆる“マリファナ”なんですね。

 

 

 

伸長する大麻ビジネスは大きく2種類

 

先ほどから“アメリカでの大麻ビジネスが急拡大している”という話をしていますが、それも大きく2種類、”CBD”入りの食品やパーソナルケア商品(化粧品やトイレタリー)に関するビジネス、そしてもうひとつは”THC”周りの商品とそれに付随するビジネスです。SXSWのセッションでも主に後者の話がなされていました。例えばコロラドでは「マリファナを吸いながらマリファナ農場を見学に行く」みたいなツアーが大人気で、コロラドの新しい「産業」になっていたり、カリフォルニアでもオシャレな女性向け吸引機器(電子タバコのようなもの)はバカ売れしたていたりと、堰を切ったように”THC関連ビジネス”が急拡大しています。ただ、少し前に盛んに言われていたように、嗜好用大麻、”THC”に絡んだ大麻ビジネスに、大企業がバンバン参入してくる、という光景は思った以上に進んでいない、という現状もあるようです。その理由は大きく二つ。ひとつは規制の問題、もうひとつはブランド価値の問題だそうです。規制の問題は、やはりアメリカらしいというか、連邦政府は”THC”をいまだに違法としているため、”THC”ビジネスは州法によってまちまちな運用を余儀なくされています。それが、全国規模、もしくは全世界規模でビジネスを展開する大企業にとってはリスクになる、ということです。さらには、ここにきて”CBD入りの食品”も連邦政府によって急に販売禁止になるなど、「あいまいな法の解釈と運用」によってモロに影響を受けるビジネスであることが明らかになってしまったことで、今後ますます躊躇する大企業が増えるかもしれません。昨日、日本における「法の運用」の話をしましたが、アメリカにも同様の問題があるようです。そして、もうひとつは企業のブランド価値の問題です。国民の6割以上が、大麻合法化に賛成しているアメリカでも、やはり年配の人たちを中心に、「大麻=非社会的」と捉える偏見が強いため、大企業が大々的に「自分たちは大麻ビジネスに参入します!」とはまだ言いずらい環境にあるそうです。その結果、大麻ビジネスは、今後ますます、若くて新しい価値観を持ったスタートアップがキープレーヤーになる市場になりそうです。次回は、SXSWでも注目された、大麻ビジネスで活発なカテゴリーのビジネスを紹介します。

それにしても、本当は””CBD”は「茎」から採れる成分だ、と書きましたが、”Cannabis”で画像検索すると、葉っぱの画像が多いですね、、、わかりやすいのでしょうか。あ、言い忘れていましたが、アメリカで大麻の話をするときは基本”Cannabis”という単語を使うみたいです。

YOSUKE MAMIYA
1994年電通入社。2年間のマーケティング局、16年間の営業局勤務を経て、2012年よりCDC。 「戦略とは、課題の言語化である」を戦略立案の芯に据え、戦略から表現まで統合し、あらゆる課題解決業務に従事。関わる領域は、広告コミュニケーションにとどまらず、事業系ソリューション、中長期経営計画立案、インナーのモチベーション・デザインなど多岐にわたる。 2017年に電通より独立。2018年 株式会社 Que 代表取締役CEOに就任。 主な仕事として、キリンビール「一番搾り」「氷結」キリンビバレッジ「午後の紅茶」「FIRE」におけるコミュニケーション・デザイン。 トヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」「PRIUS PHV」「C-HR」のコミュニケーション戦略、 NTT ドコモ「2020 東京オリンピック協賛プロジェクト 」、プレナス「ほっともっと」ブランディング・ディレクション、日清食品「カップヌードル」 「UFO 」におけるキャンペーン・プランニングおよび、フロンテッジにおける事業コンサルテーションなど。