こんなにあるの!?
「ファーストフード理論」

仁藤 安久

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気がつけば「令和」

1年以上コラムを書くことから遠ざかっていて、気がつけば、元号も平成から令和に変わっていました(苦笑)

気持ちを入れ替えて、コンスタントに記事を書いていこうと思います。

さてさて。

さてさて。

えぇと。

しばらく書いていないと、筆が鈍って何から書いていいのか、思考停止してしまいます。

というわけで、どうでもいい話題から。

元号が発表される前のことなんですが、次はどんな元号なのか予想する、ということが企業のキャンペーンやテレビ番組で行われていたことを覚えていますか?

「女子高生が予想する新元号は、これだ!」とか「新元号、国民総選挙」とか、いろいろ行われていました。

そのときに、なぜか「安久」が、1位を取ることが多かったんです。安久とは、私(仁藤安久)の下の名前。これは、地味に嬉しかったんです。

「正真正銘の『俺の時代』がやってくるぜ」なんて当時は調子乗って言っておりました。

 

虚構新聞にもこんな記事が(笑)

なぜ、嬉しかったのか。

それは、これまでの人生の中で、下の名前で呼ばれることがほとんどなかったからなんです。

たとえば、数年来の友人からも、

「あれ、おまえの下の名前ってなんだっけ?」

と言われる始末。ぜんぜん、覚えてもらえなかったんです。

極めつけは、前職で、1年間営業局で働き、クリエイティブ局に異動するときの話。

営業局の皆さんから名前を刻印した鉛筆1ダースをプレゼントしてもらったんです。「この鉛筆をつかって、いいコピーをいっぱい書いてね」と。

その箱をあけてみると、そこには「にとうやすひと」と書かれていました。1本1本・・・全部で12本に「にとうやすひと」と。

1年間、一緒に働いていたのに、名前すら覚えられていなかった…。

書かれている名前が違いますとは、言うことができず、静かに持ち帰ったことを覚えています。

名前って大事

当たり前ですが、名前って、たんなる識別記号ではありません。

覚えやすかったり言いたくなってしまったり、名前から中身の想像が膨らんだり、美味しそうに感じたり、面白そうに感じたり、いろんな機能をもたせることができるんです。

名前がいいから売れている商品もありますし、逆に、名前がイマイチだから売れていない商品もあります。

じゃあ、僕らの属している業界はどうなのでしょうか。今日は、クリエイティブやマーケティング周りで使われている「○○理論」について、ネーミングの側面から調べてみました。(←と無理くり本題へ)

ファーストフードからネーミングされた理論

ひとくちに理論といっても、たくさんあります。なので、かなりぎゅーっと絞ってみたいと思います。

自分は後述する「マクドナルド理論」についてよく話題にするのですが、誰に話をしても反応がいいんです。その理由は、内容もそうですが理論の名前がキャッチーという点もあるなぁ、と思うのです。

他にもこういう名前のものはあるのかしら、と調べてみました。すると、でてくるでてくる。どれも、なかなかおもしろいんです。なので今回は、『「ファーストフード理論」大集合』と題して、ファーストフードの食べ物をネーミングに用いた理論を集めて紹介したいと思います。(正確に言うと、ほとんどが「理論」と呼べるまでのものではないのですが…そこは突っ込まずに気楽に読んでくださいませ)

マクドナルド理論(アイデア)

まずは、さきほどちらりと話した「マクドナルド理論」から。

こちらは、名前の通りハンバーガーショップのマクドナルドが関係しています。

どんな理論なのか、カンタンに説明しますね。

たとえば、特別に仲がいい友達ではないグループで行動を共にしないといけない時がありますよね。職場でもありますし、ワークショップなどで知り合ったばかりの人たちという時もあるでしょう。

お昼時に食事にでる場合を想像してみてください。「ランチ、どこにする?」とみんなに問いかけますが、みんながそれぞれ相手の様子を気にして、なかなか意見を言わないみたいなことがありませんか?私の場合、仲の良いメンバーと一緒に御飯に出るときも、そういうことがよくあります。そうこうしているうちに、短いランチタイムは無駄に消費していまいます。

そういう時に「マクドナルド行こう!」と提案してみるとどうでしょう?

「いや、マクドナルドはないでしょ」というようにみんなは否定しますが、不思議な事にそれ以後は議論が活発化していき、次々と提案がされるようになっていきます。

「和食の○○は、どうだろう?」

「昨日はお肉だったから、焼き魚とかがいいかもね」

「それだったら、このお店はどう?」

このように「想定しうるなかでの最低の提案」をすることにより「その最低の提案が可決されるのを阻止」しようと、あるいは誰かが最初に最低のアイデアを口にした結果、二人目以降の発言のハードルが下がり「もしかしたらこんなこと言ったらばかばかしいと思われるかも」といった心配が薄れ、皆の間で議論が活発化します。

ブレストのときに、なにも意見がでずに重い空気になってしまうことありますよね。そのときは、このマクドナルド理論を思い出してください。いきなりいいアイデアなんて言わなくていいんです。最低なアイデアでもいいから、発すること。これが大事なんですね。

ネーミングについては、どうなんでしょう。昔は、積極的に行きたいお店ではなかったマクドナルドも、最近は美味しいので「いいね、行こう行こう」ってなってしまいそうですね。

参考:Gigazine

マクドナルド理論(戦争)

「マクドナルド理論」には先述のものとは、違うものも存在しています。

というか、こちらの方がおそらく有名。トーマス・フリードマンが『レクサスとオリーブの木』の中で提唱したもので、マクドナルドが出店している国同士は戦争しない、というものです。たしかに!と思いましたが、こちらの理論は、1999年に破られてしまっているようです。

著書『レクサスとオリーブの木』の中で、フリードマンが提唱した外交理論。「ある国の経済が、マクドナルドのチェーン展開を支えられるくらい大勢の中流階級が現れるレベルまで発展すると、その国の国民はもはや戦争をしたがらない。むしろ、ハンバーガーを求めて列に並ぶ方を選ぶ」。要約すると「マクドナルドのある国同士は戦争を行わない」と言う主張だが、後にコソボ紛争(アライド・フォース作戦)と南オセチア紛争 (2008年)が起きたことで批判を浴びている(いずれの国にもマクドナルドがあった)。

出典:wikipedia「ハンバーガー」

こちらは、「黄金のM型アーチ理論」とも呼ばれていたようです。

2枚のピザ理論

こちらは、AmazonのCEOであるジェフ・ベゾスが提唱する「2枚のピザ理論」というもの。プロジェクトを進めていく上での大切な「とある基準」についての理論です。

どんな業種であれ、チームの仕事を効率的にするためには、そのプロジェクトに何人が関わるかが重要です。米AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏は、人員過多による弊害を防ぐには「2枚のピザ理論」を適用すべきだと提唱しています。ビジネスメディア『Fast Company』の Rachel Gillett氏は、この理論は言葉の響きどおりシンプルな考え方だと説明しています。 ものすごい食欲を目の前にして2枚のピザを注文したと想像してみましょう。この2枚のピザでいったい何人を賄えるでしょう? その答えがチームプロジェクトに参加させるべき人数だというのです。だいたい5人から8人くらいといったところでしょう。この数字を越えると、チームワークが破綻する可能性が増えていきます。

出典:Lifehacker

この理論の良さは、「何人」と明確に定義しているのではなく、人数の弾力性をもたせているところですね。

この理論、自分もそうだなぁと思います。プロジェクトもそうですが、ワークショップを行ったりするときも「5人から8人くらい」のグループだと、いいアウトプットに結びつく気がします。

サンドイッチ理論(印象編)

こちらは、音楽家の久石譲さんが提唱している理論。

初対面の人と会う。第一印象は「この人軽そう。ペラペラよく喋るし、なんだかあまり信用できそうな感じがしない……」だったとする。しかし、しばらく付き合っているうちに、「いや、そうでもないかな」(中略)と感じるようになる。(中略)大抵の人は、ここでその人の本質を見た気になってしまう。だが、しかしである。もっと長く付き合って、その人が土壇場に追い込まれたときを見てみたらいい。必ず、最初の印象に戻る。「なんだ、いざとなったらやっぱり軽かった」といったことになるケースが多い。僕はこれを「サンドイッチ理論」と呼んでいる。

『感動をつくれますか?』久石譲

最初に抱いた第一印象(外側のパン?)が結局正しい、ということでしょうか。確かに、最初に感じた「違和感」みたいなものって、本質をついているってことが多いような気がします。

 

サンドイッチ理論(文章編)

これは、世の中で言われているというよりも私が勝手に言っているものです(笑)

職業柄、文章の書き方講座をやらせていただくことがあるけれど、ブログなどを書く上で一番ベーシックなのは、サンドイッチを意識して書くことが大切、と。

導入(パン)→柱と文章1(具)→柱と文章2(具)→柱と文章3(具)→締め(パン)

といった具合。具だけだと食べにくいから、導入では、「共感とか質問」で具を食べやすい形にしてつなぎ、締めでは、読者が何かしらのアクションにつなげられるように「提案」が入っているといいですねと言っています。

ハンバーガーコーラ理論

「このハンバーガーとコーラは世界で一番売れている。だから世界で一番美味しいものに決まっているだろ。」という『Q.E.D.…証明終了』(加藤元浩)漫画のフレーズから有名になったこの理論。「売れてるものが良いものならば、この世で一番うまいラーメンはカップラーメンだ」という甲本ヒロトさんの名言も同じことを言っていますね。

売上至上主義の行き着く先を皮肉ったとして、定着しているフレーズ。
面白い面白くないという主観的基準でアニメの価値を測れないという理由から、
アニメを売上で評価するパターンは多いが、逆転現象が発生して、
売上枚数によって主観的評価すら変化してしまう人や、覇権アニメだから見るというスタンスの、
悪い意味で売上脳に汚染されてしまった人を皮肉る目的で使われることが多い。

出典:アニメDVD・BDの売り上げを見守るスレ@wiki – 用語集/ハンバーガーコーラ理論

ヘルシーマクドナルド理論

この流れでもうひとつ、自分でつくることができないか、と考えてみました。マーケティングの世界では、しばしば言われることですが、調査をするときの罠としてこんなものがよくあると思います。

たとえば、マクドナルドに来ているお客さんに「新商品をつくるとしたら、どんなハンバーガーを食べたいと思いますか?」と聞くとします。

そうすると、ある一定以上の割合で返ってくる答えは、

「ヘルシーなハンバーガー」

ですが、実際にヘルシーなハンバーガーを商品開発して販売してみるとどうでしょうか?

あまり売れ行きが伸びないと思うのです。

「質問にたいして頭で考えて答える」という行為と「実際の購買行動」には、ギャップがあるのです。質問に対して答えるときは「理性」が働いているけれど、人の行動というのは理性だけではないのです。自分自身を振り返ってみても、マクドナルドに行くという選択をしているときは、あまりヘルシーなものを求めていないです。むしろ、逆といいますか…。
というわけで、このようなマーケティング調査の結果と、実際の購買行動のギャップが生じることを「ヘルシーマクドナルド理論」と呼びたいと思います。私の勉強不足で、もうこういうようなものについて、名前が付いているようでしたら教えて下さい。

最後に

調べてみるといろんな理論があることがわかりました。

ファーストフードという身近なものに例えるからこそわかる世の中の法則。難しいことも、少し身近に感じられるような気がしました。ファーストフードだけに、理論というほどでは・・・という気もしますが。また見つけたら、このリストに加えていこうと思います。

 

YASUHISA NITO
1979年、静岡県生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程にて文化人類学・地域づくり・ネットワークコミュニティ論を専攻した後、2004年電通入社。 コピーライター及びコミュニケーション・デザイナーとして、日本オリンピック委員会、日本サッカー協会、三越伊勢丹、森ビル、ノーリツ、西武鉄道などのクリエーティブ業務を担当。電通サマーインターン座長、新卒採用の戦略にも携わり、クリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッドの開発を行う。2017年に電通を退社。新規事業開発担当として、広告・コンサルティングの他に、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、顧客サービス、人事・教育への、 広告クリエーティブの応用を実践している。 受賞歴は、ロンドン国際広告賞 金賞、ニューヨークフェスティバル 銅賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。