アイデア発想の
一番の極意かもしれない話

仁藤 安久

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アイデア発想の一番の極意かもしれない話

アイデアをつくっていくときに、大切にしている話をしたいと思います。それが、目の前の課題に「どう取り組みはじめるか」ということです。

私は特に怠惰な人間なので、取り組まなければいけないタスクがありながらも、なかなか取り組めないことが多くあります。やらなければいけない、とわかっているからこそ、不機嫌になってしまったりストレスが溜まってしまうことも日常茶飯事。平たく言えば「やる気」のコントロールがなかなか上手くできませんでした。
そんな私が変わったきっかけが、詩人の谷川俊太郎さんのインタビューでした。一言一句までは覚えていないのですが、「谷川さんは、どのように詩をつくるのですか」という質問に答えているものでした。

私は、頭の中に明確なイメージができた上で一気に書き上げるものだと想像していたのですが、谷川さんの答えは違いました。

「まず、パソコンの電源を入れて、テキストを書くソフトを立ち上げて、そして、考えて思い浮かんだ言葉を書く」と言っていたのです。

「インスピレーションが湧いたからはじめる」ではないんだ!!と衝撃をうけました。天才だと思っていた人も「エイヤっ」とスイッチをいれている。とにかく、はじめることが大事なんだ、とわかったのです。

それ以来、アイデアをつくるときも、まずは何でもいいから「はじめる」ことにしました。たとえば、企画書を書くときには、まず企画書の表紙を徹底的にこだわってデザインしています。すると、デザインしているうちに気分が乗ってきて、企画書をいいリズムで書くことができます。

とにかくはじめることを意識してから、随分とアイデアの生産性が高まったように思います。

どうやら脳科学的にも、やる気というものは、いくら待っていてもでてくるものではないようです。脳は動かしはじめると、その刺激を受けて、やる気というものがでてくるそうです。そのためにも、「あぁ、やらなきゃ」とネガティブな気持ちを抱えて何もしないよりは、頭と同時に手も動かしてみましょう。与件を整理するところからはじめてもいいですし、固定観念にとらわれず仮説を多くだすところからはじめるのもよいでしょう。アイデア発想の一番の極意は、止まっていることよりも、動きはじめることなのです。

 


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YASUHISA NITO
1979年、静岡県生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程にて文化人類学・地域づくり・ネットワークコミュニティ論を専攻した後、2004年電通入社。 コピーライター及びコミュニケーション・デザイナーとして、日本オリンピック委員会、日本サッカー協会、三越伊勢丹、森ビル、ノーリツ、西武鉄道などのクリエーティブ業務を担当。電通サマーインターン座長、新卒採用の戦略にも携わり、クリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッドの開発を行う。2017年に電通を退社。新規事業開発担当として、広告・コンサルティングの他に、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、顧客サービス、人事・教育への、 広告クリエーティブの応用を実践している。 受賞歴は、ロンドン国際広告賞 金賞、ニューヨークフェスティバル 銅賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。