間宮のコラム まみこら vol.4
“新しさ”ってなんだろう(1)

間宮 洋介

SHARE

「新」について考えてみました

新メンバー、入りました

 

株式会社Queに、新しいメンバーが入ってきました。特別に求人募集をしていたわけではないQueですが、縁あって若手(27歳)のプランナーに加わってもらうことになり、元メンバー全員がちょっと浮き足立っています。何しろもともとオフィスにいたのは5人。そこに一人加わるのですから、迎える自分たちにとっても「そこそこ新しい環境」が出来上がるわけです。新人君の成長を全力でサポートしなければならないなあ、という責任感とともに、新しい関係性や新しいことが始まる期待にワクワクしていたりもします。

 

 

今年の4月は「新」が多い

 

2019年4月1日の、「新」にまつわる話題といえば、とにもかくにも「新」元号の発表でした(Queに新人が入った、という話ではなかった、、、残念)。そのほかにも働き方改革関連法案の施行や外国人就労受け入れ拡大の新制度など、今年は社会の構造に関わる「新」が多い新年度のスタートだったと思います。その中でもやはり新元号の発表。個人的には普段の生活では元号よりも西暦を使うことの方が多いしわかりやすいのでそれほど注目していたわけではなかったのですが、当日に至る世間の騒ぎっぷりをみていると、世の中が「新」に期待し、「新」を話題にしたがっているんだな、と改めて思いました。そういう意味では、今年は新元号の発表があったからか、毎年結構な数やっている企業のエイプリルフールネタが少なかった印象もありますね。

 

 

人はなぜ「新しい」に惹かれるのか

 

一般的に人間は(動物も)「変化」を恐れると言われています。「変化」はストレスを引き連れてくるものなので、人間も、生物学的には「なーーんにも変わりない世界」でのほほんと暮らしている方が、本能的には好ましい状態なのかもしれません。それでも、人間はどこかで「新しいこと」に出会うと少なからずワクワクしてしまいます。新商品が出たら試したくなってしまうし、テーマパークに新しいアトラクションができたらつい行きたくなってしまう。新しい場所に行くと恐怖よりは興奮してしまう。人間が新しいことにワクワクするのは、じっとしていることで得られる「安全にいたい欲求」よりも、動き回り、新しいことに触れまくることで得られる「好奇心を満たしたいという欲求」の方が瞬発的にエクスタシーを感じやすいからなのかもしれません。

 

 

 

ビジネスにおける「新しい」と「チャレンジ」

 

一方で、こと仕事、ビジネスの話になると、「新しいこと」は人間に牙を剥き始めます。例えば、「新しいこと」「魅力的」でググってみると、真っ先に出てくるのが「魅力的な人間とは、常に新しいことにチャレンジしている人」みたいなWeb記事が山のように出てきます。それはつまり、「新しいことに挑戦する判断ができること」が、ビジネスにおいては「有り難い=あまりない」ことだからだと思います。普段の生活では無条件に「新しいことにワクワク」するのに、ことビジネスとなると新しいことをなかなか起こせない。それはやはりビジネスにおいては(最近は特に)「説明できない不確定な未来は不安要素だから」という社会的なインサイトがあるからだと思います。その反動として最近、「チャレンジ」という言葉がやたらともてはやされ、「(たとえ失敗しても)チャレンジし続ける人」が一種のヒーローのように扱われるのは、そういう理由なのかもしれません。

 

 

 

ビジネスには、目的性のある「新しさ」が必要

 

一方で、最近、ビジネスにおいてあまりにキーワードとして「チャレンジ」という言葉がもてはやされすぎていて、「チャレンジ」しさえすればいいのか、と思うことがしばしばあります(個人の感想です)。もちろんビジネスにおいて、「チャレンジ」は重要な要素です。やってみないとわからないことは、やってみないとわからない。ただし、ビジネスである以上、「なんとなく新しいことやってみたよ」だけでは済まされないのも事実です。ビジネスにおいて「新しいことをもたらすチャレンジ」を試みる場合、最も重要なのが、その「目的性」です。なんのためにその「チャレンジ」をするのか。ビジネスにおいては、目的性の見えないチャレンジは、ゴムの耐久性を確認せずに勢いで飛ぶバンジージャンプのようなものだと思います。

 

 

新しさを「言葉で」ワクワクさせる

 

そして、「チャレンジの目的性」を明確にするための手段として最も大事なのが、「言語化(言葉)」です。「チャレンジ」を成功に導くためには、その「チャレンジ」の行き着く先の景色を言語化することが重要になります。その「チャレンジに関わる人」を、「まだ体験していないのにあたかも体験したかのようにワクワクした気持ちにさせる」必要があるからです。これが「そのチャレンジをした際に得られる、ワクワクするような景色を言語化すること=ビジョン」です。その時になぜ「言葉」が大事なのかというと、やはり人間はイメージを「言葉」で共有する動物だからです。今、いくつかのお仕事を手伝わせていただいている中で思うことは「チャレンジする気概」には溢れているけど、「その先のワクワクするような景色」があまり伝わってこないケースが多い、ということです。「よくわからないけどすごい気合いだ。でも、一向にわからない」という困った状況。それはとりもなおさず「チャレンジ」における「目的性」が不明確で、さらには「その言語化」ができていない、ということだと思います。

 

 

 

本質的で「正しい」チャレンジのために

 

ビジョンを言語化するのが重要な理由は、実は周りの人を巻き込むためだけではありません。ビジョンの言語化は、実はその「チャレンジ」をしようとする人その人自身をワクワクさせ続けることができるからです。ビジネスにおいて、状況や環境は刻々と変わっていきます。その中で「自分が最もワクワクするまだ見ぬ景色」を言葉にしておくことで、その後、何があっても、自分の進むべき方向を持ち続けることができます。「言葉」には、それだけの力があります。そういう意味では、ビジネスにおいて「新しいことをもたらすチャレンジ」を成功させるのに最も重要な力のひとつは、いつもあなたが使っている「言葉」を駆使して、いかにセクシーで人をワクワクさせるような文章を作り上げる「国語力」なのかもしれません。

 

それにしても、最初にカニとかナマコとかを食おうと思って実行した人ってすごい勇気ですよね、、、

YOSUKE MAMIYA
1994年電通入社。2年間のマーケティング局、16年間の営業局勤務を経て、2012年よりCDC。 「戦略とは、課題の言語化である」を戦略立案の芯に据え、戦略から表現まで統合し、あらゆる課題解決業務に従事。関わる領域は、広告コミュニケーションにとどまらず、事業系ソリューション、中長期経営計画立案、インナーのモチベーション・デザインなど多岐にわたる。 2017年に電通より独立。2018年 株式会社 Que 代表取締役CEOに就任。 主な仕事として、キリンビール「一番搾り」「氷結」キリンビバレッジ「午後の紅茶」「FIRE」におけるコミュニケーション・デザイン。 トヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」「PRIUS PHV」「C-HR」のコミュニケーション戦略、 NTT ドコモ「2020 東京オリンピック協賛プロジェクト 」、プレナス「ほっともっと」ブランディング・ディレクション、日清食品「カップヌードル」 「UFO 」におけるキャンペーン・プランニングおよび、フロンテッジにおける事業コンサルテーションなど。