ブランディングはマウンティングであってはならない

間宮 洋介

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先日、尊敬する先輩から「間宮が考えるブランディングってなんだと思う?」と聞かれました。その時に、自分は「ブランディングって、好きにさせること、だと思います。ちょっとエモく言うと【愛される差】をつくること、と言うか」という記憶があります。

これらの言葉の解釈、について全員がうなづいてくれるかはわかりませんが、その後先輩とは「そうだよねー」「それくらいシンプルでいいんだよね」と盛り上がりました。(ちなみに同時に話した「マーケティング」の定義とは?との問いには「欲しくさせること」と答えた気がします。)

かつて自分は、ブランディングとはもう少しざっくりと「他と(明確な)線を引くこと」だと定義していました。そもそもブランドとは自分の牛と他の家の牛を「区別」するための焼印(BURNED)から来ているからです。

だからブランディングは【差】をつくって線を引くこと、そう思っていました。それを【愛される差】をつくること、に自分の中の定義を変えたのには理由があります。

とても真面目に言えば、「【差】をつくることは手段であって目的ではない。目的はあくまでも好きにさせることだから」ってことなのですが、もう一つ、個人的で現代的な理由があります。

最近、日常生活において、リアルでもネットでも、「人って【差】をつけないと生きていけない動物なんだな」と改めて思うことが増えました。社会全体では強く同調圧力が働く中で、「でも(さりげなく)私は違う」ということを伝えたい、というような「複雑なマウンティング」に遭うことが増えたように思うんです。もしかしたら自分もやってしまっているかもしれません。

マウンティングも【差】をつくることだと思います。でも多くのマウンティングに対して、人はいい感情を抱かないものです。それは一時の優越感を与えてくれるかもしれませんが、【愛される差】でないことが多い。ビジネスとしてのブランディングはそうであってはいけないと思います。愛されなければ選ばれないし、愛されなければ続かない、愛されなければブランドはビジネスに貢献しないのです。ブランディングに必要なのは、最終的にブランドを愛されるものにすること、そのために【愛される差】をつくること。

つくろうとしている【差】がマウンティングになっていないか、そのことに細心の注意を払いながらブランディングを支援していきたい、Queはそう考えています。

YOSUKE MAMIYA
1994年電通入社。2年間のマーケティング局、16年間の営業局勤務を経て、2012年よりCDC。 「戦略とは、課題の言語化である」を戦略立案の芯に据え、戦略から表現まで統合し、あらゆる課題解決業務に従事。関わる領域は、広告コミュニケーションにとどまらず、事業系ソリューション、中長期経営計画立案、インナーのモチベーション・デザインなど多岐にわたる。 2017年に電通より独立。2018年 株式会社 Que 代表取締役CEOに就任。 主な仕事として、キリンビール「一番搾り」「氷結」キリンビバレッジ「午後の紅茶」「FIRE」におけるコミュニケーション・デザイン。 トヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」「PRIUS PHV」「C-HR」のコミュニケーション戦略、 NTT ドコモ「2020 東京オリンピック協賛プロジェクト 」、プレナス「ほっともっと」ブランディング・ディレクション、日清食品「カップヌードル」 「UFO 」におけるキャンペーン・プランニングおよび、フロンテッジにおける事業コンサルテーションなど。