間宮のコラム まみこら vol.11
五感とインサイト(2)

間宮 洋介

SHARE

「インサイト」の正体

そもそも“まみこら”ってなんだ

 

長かった今年の東京の桜も、ついに葉桜になってきました。毛虫のトラウマが。ところで、自分は文章の中で「そもそも」という言葉を結構使う癖があるのですが、「そもそも」で言うと、「間宮のコラム 略してまみこら」って、そもそも一体なんなんだよ、と言うセルフツッコミが、今日シャワー浴びながら浮かんできたので、定義しておきたいと思います。ですよね。いきなり「まみこら」とか言われても。好きなことを書きなぐっているように見えるかもしれませんが、一応、「まみこら」は「ストラテジスト間宮が、事業やコミュニケーションの戦略を立案する際にもしかしたら役に立つかも的なことを、出来るだけわかりやすく(でも自分勝手に)言語化するコラム(略してまみこら)」だと考えています。なので、書いてあることが戦略策定において絶対的な正解というわけでも、多数派だからこうしておけば間違いなし!というわけでもありません。「そうだなー」「そうかも!」と思うところだけ生暖かくピックアップしていただければ幸いです。要は、テーマは戦略についてですが、まあ好きなことを書きなぐっているコラムです。

 

画像は超絶イメージです

 

 

巷に溢れる「インサイト」

 

前回、「インサイト」について書き始めました。戦略立案、特に人と関わる事柄に関しての戦略(コミュニケーション戦略など)立案において、「インサイト」は頻出ワードであることは昨日も書いた通りです。今日の午前中のとある打ち合わせでは40回くらい出てきました。ただ、やはり例えばいろいろな打ち合わせで出てくる「インサイト」の意味は、少しずつ違っているように思います。もちろんどれが正解でどれが不正解、というわけではないのですが、自分はもう少し「インサイト」という言葉と概念を大切に使うべきなのではないかな、と思っていたりします。「インサイト」とは、前回定義したように、自分は「人を動かす“隠れた”意識や心理」だと思っています。昨日は「”隠れた“意識や心理」をどう「見抜く」か、という話をしたのですが、今回はその前半部分、「人を動かす」の部分について書いてみたいと思います。

 

 

改めて、「インサイト」とは

 

「人を動かすインサイト」の話をするには、もう少し自分の考える「インサイト」について話した方がいいかもしれません。これまた誤解を恐れずにいうと、「インサイト」とは「意識や心理に基づいた、『あるある』」だと思っています。決して「そうしよう」とか「そうしなきゃいけない」と自分で意識するわけでなく、文化的に、もしくは年代的に、はたまた本能的に、ついつい思ってしまう、行動してしまう、その行動・思考パターンです。そしてそのパターンがある程度多くの人に当てはまるとき、それは「太いインサイト」ということになります。「あるある」も、当てはまる人が多ければ多いほど共感され、そしてそれが言語化されることで、人はいつの間にかそういう行動を取るのが当たり前のように思うようになります。

 

 

「歳をとるとおいしいものが『幸せ』につながる」というインサイト

 

例えば以前、あるビールブランドの打ち合わせをしているときにあるクリエーティブディレクターが、「なんか、歳をとるといろいろなモヤモヤがあるときに『あー、思いっきりおいしいもの食いたい』と思ったり、おいしいもの食ったら幸せな気分になって、大抵のことは許せるようになったりしてきたんだよ。若い頃はそんなことなかったんだけど」と発言しました。それに対し、その場にいた人たちはみんなそこそこおっさんなこともあり「わかるー。あるある」となりました。これは「『年代』と『おいしい』と『幸せ』あるある」です。当たり前に思えるかもしれませんが、そういう「太いインサイト」こそ、マーケティングにおいて人を動かすことにつながります。ビールの戦略立案において、はその後、ターゲットを「おいしいものを食べる幸せがわかるようになってきた年代の方」と定め、「おいしいビールを飲むと幸せな気分になる」という「太いインサイト」を使って、「(面倒くさいことも色々あるけど)幸せな気持ちになるために、今夜はおいしいビール飲もうよ」と呼びかけることで人を動かす。そういう構造をつくりました。「インサイト」を発見し、人の「意識」と「行動」を結びつけることができるかどうかが、戦略立案のカギになります。「人は幸せだから笑うのか、笑うから幸せになるのか」、よく議論される話ですが、それに似ていますね。

 

 

 

見つければいいってもんじゃない

 

そういう意味では、「インサイト」というと、どうしても「“隠れた”意識や心理、を発見した!」「こんなインサイトがあった!」という「発見の喜び」が大きいがゆえに、それがマーケティング活動に役に立つのかということが後回しにされることが多いように思います。もちろんそれもそれで一つの「インサイト」なのですが、自分は学者ではないので、そこに潜む「意識や心理」が正確にわかったところで実はなんの役にも立ちません。大切なのはそのインサイトが「人を動かす可能性のあるインサイトか」を見極めること、そして「見つけたインサイトで人を動かす」ことだと思っています。「インサイト」についてはまだまだ話し足りなかったりするので、次回は「吉田兼好とインサイト」の話を書こうかなと思います。

YOSUKE MAMIYA
1994年電通入社。2年間のマーケティング局、16年間の営業局勤務を経て、2012年よりCDC。 「戦略とは、課題の言語化である」を戦略立案の芯に据え、戦略から表現まで統合し、あらゆる課題解決業務に従事。関わる領域は、広告コミュニケーションにとどまらず、事業系ソリューション、中長期経営計画立案、インナーのモチベーション・デザインなど多岐にわたる。 2017年に電通より独立。2018年 株式会社 Que 代表取締役CEOに就任。 主な仕事として、キリンビール「一番搾り」「氷結」キリンビバレッジ「午後の紅茶」「FIRE」におけるコミュニケーション・デザイン。 トヨタ自動車「AQUA」「MIRAI」「PRIUS PHV」「C-HR」のコミュニケーション戦略、 NTT ドコモ「2020 東京オリンピック協賛プロジェクト 」、プレナス「ほっともっと」ブランディング・ディレクション、日清食品「カップヌードル」 「UFO 」におけるキャンペーン・プランニングおよび、フロンテッジにおける事業コンサルテーションなど。